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「幼児からの英語教育で“音のレパートリー”を増やしておくことが大切」 ~上智大学言語教育研究センター センター長/吉田研作教授~

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■小学校の英語必修化 すばらしい授業を行っている学校も

――2011年4月から小学5、6年生の英語必修化が始まりましたが、2年経ちどのような感想をお持ちですか?

文部科学省の学習指導要領の改訂前から、英語教育に取り組んでいる学校は、先生も授業がうまいし、子どもたちの英語力も伸びている。そういうところはたくさんありますよ。日本人の先生でも全部英語で授業をしていて、子どもも楽しみながら先生の指導についていくし、授業自体もすばらしい。頑張っているところは、1年生から授業をしているところも多いです。

一方で、正式に必修化が始まる前までは、手つかずで、放置していたところは、先進校に比べるとなかなか追いつかない。始まったからと一生懸命やっていますが、四苦八苦してやっているところはありますね。

■子どもは言葉のすばらしき“あいまいさ”を実体験できる

――小学校に上がる前に英語を学ぶのと学ばないのとでは、具体的にどのような差が出るのでしょうか?

実質的なコミュニケーションの差はさほどないと思うけれど、小さい時のほうが音に敏感です。生まれて1年くらいは、世界に存在する音を聞ける能力があると言われています。日本語を母語として聞いていると、その力が日本語に集約されてきますが、英語のRとLの区別は生後6カ月なら、日本人でもアメリカ人でもまったく変わらないくらい識別できます。

だから、音に敏感に反応できるように、最初からその機会を閉ざしてしまうんじゃなくて、いろんな音、いろんな言語に触れておくと、母語とは違った音が入ってきても、違和感なく受け入れられると思う。音が自然に耳に入っていけば、苦手意識も減る可能性があります。 “音のレパートリー”を増やしておく、いつでもアクセスできる下地をつくっておくというのは、いいことではないでしょうか。

――中学校の場合だと「1年生はbe動詞を学ぶ」など、段階的に学んでいきますが、幼児の英語教育にも段階や“学ぶ範囲”があるのでしょうか?

もともと小さい子どもは論理的に学んでいくわけじゃない。だから、英語で言ってみたらわかってもらえたとか、使ってみたらほめられたとか、それがいちばんです。

言葉ってもともとあいまいでしょ? 幼児期は言葉のすばらしい“あいまいさ”を味わえる、いちばんいい時期なんです。中学に入ると、理屈で考えるから正解と不正解が出てしまうんですね。

■親の発音がネイティブと違うことくらい、子どもはすぐわかる(笑)

――子どもに英語教育を受けさせる際に、親が気をつけるべきことは何ですか。

「自分が英語できないから…」と言ってやらせていると子どもは嫌がります。絶対、無理。親は子どもにとって神様なのに、それが「私できないからあんたやりなさい」では、とても負担です。親が「一緒にやろうね」「一緒に歌おう」と言うと、子どもは楽しめるのです。

――けれど、親の立場から言わせてもらうと、発音に自信がない場合、英語を発することさえ尻込みしてしまうのですが…。

子どもは頭がいいから、親の発音がネイティブと違うことくらいすぐわかる。CDを聞いてると、そちらを自然とまねます。だから、モデルの発音としてCDやDVDを流しておけばいいんです。子どもはそれを聞いていると、親の発音は怪しいなというのは気づいてくるもんです(笑)。通じる発音がいちばん大事だから、気にすることはありません。

■はじめての英語教育は「BGM」で十分

――もし、子供が英語教材に興味を示さない場合は、どうしたらいいでしょうか。

最初からうまくいくなんてことはないと思う。最初は環境を整えることが大事なんじゃないでしょうか。すぐについてくる子もいるし、少し時間がかかる子もいる。子どもが興味を示さないからと言って、「じゃあ、やめよう」とすぐに教材をお蔵入りさせちゃったら、先はないです。はじめはBGMでいいんだと思います。

――英語教材にプラスして、家庭でもできる日常の英語教育がありましたら、教えてください。

親が好きなスタンダードな曲とか、物語など、親が英語で楽しんできたことが、ポツポツ日常生活に入ってくると、それがプラスアルファになると思います。

――ベネッセの英語教育ブランド『Worldwide Kids』から、幼児を対象にした英語に触れあうアプリ「Hello! Mimi-Mimiちゃんと英語であそぼう!」が出ました。こちらも日常生活に取り入れやすい“プラスアルファ”と言えそうですね。

ベネッセさんは研究力があるんですよ。調査をして、理論に基づいてやっている。土台がしっかりしているから、安心できます。言葉って継続性が必要で、どれだけたくさん触れて、どれだけたくさん使うかがキー。親と子どもが一緒に楽しめるものはいいと思いますよ。

――『Worldwide Kids』に先生が監修された、0歳児から始められる「Stage0」も新たに登場しました。こちらも、親子が触れ合いながら、英語に親しみ、楽しむ工夫がたくさん詰まっているようですね。

 先生、今日は貴重なお話をありがとうございました。



■吉田研作教授プロフィール
1948年京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業。同大学大学院言語学専攻修士課程修了。ミシガン大学大学院博士課程修了。現在、上智大学言語教育研究センター教授、言語教育研究センター長を務める。英語教育、バイリンガリズム、異文化間コミュニケーション教育の第一人者。文科省などの外国語教育に関する各委員会にも携わり、英語が使える日本人の育成に関する研究、活動を行っている。

【関連リンク】
幼児向け英語教材「Worldwide Kids(ワールドワイドキッズ)」
http://www.benesse.co.jp/wk/years/0years.html


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