国立劇場に併設する「国立演芸場」(千代田区隼町)1階の「演芸資料展示室」で現在、「浪曲展-国立劇場所蔵資料にみる」が開催されている。
国立劇場では、演芸関係の資料を収蔵する公的機関がなかったことから、多くの篤志家の協力を得ながら、散逸しがちな大衆芸能関係の資料の収集と活用に取り組んできた。「月刊浪曲」初代編集長で浪曲研究家の芝清之さんが寄贈した資料のほか、浪曲師やその家族が寄贈した資料も多くあるという。
「月刊浪曲」元編集長で横浜にぎわい座館長の布目英一さんが監修した同展では、同劇場が所蔵する浪曲資料を中心に111点を公開。会場では明治から大正時代にかけての代表的浪曲師・桃中軒雲右衛門の現存する唯一の書簡とされる「伊原青々園宛書簡」、寿々木米若の戦前戦後の12年間にわたる口演の記録などの史料価値の高い博物資料、「月刊浪曲」編集部旧蔵で現在、布目さんが所蔵する明治以来~昭和戦後期の浪曲師の写真や資料、写真家の横井洋司さんが撮影した昭和の名人の写真など、明治から平成まで浪曲の歴史を通史的に展観する。
ほかにも、浪花家辰造の「黒田節」や国本武春の「ザ・忠臣蔵」など、同演芸場公演記録映像を展示室内のモニタ-で上映する。上映作品は「浪曲のエッセンスをバランスよく見てもらえるものを選定した」という。
国立劇場調査資料課の担当者は「浪曲のみに対象を絞った展示は、1989(平成元)年に開催した『芝清之コレクション 浪曲資料展』以来。なかなか紹介することができていなかった資料を今回、体系的にご覧いただける。会場に掲示する布目さんの解説が過去から現在の浪曲界への温かいまなざしに満ちているところも感じてほしい」と話す。
展示時間は10時~17時。休室日は1月31日、2月21日・24日・26日~28日。入場無料。3月21日まで。問い合わせは同劇場調査養成部調査資料課図書・資料係(TEL 03-3265-7061)まで。