――フーターズを日本でもはじめようと思ったきっかけを教えてください。
もともと私自身がアメリカのフーターズのファンだったんです。以前、マクドナルドで働いていたのですが、仕事でアメリカによく行っていました。現地の人間に「面白いところがあるから行こう」と連れていかれたのがフーターズ。それですっかりハマってしまって(笑)。「なぜ日本にもないのだろう」と思うくらい好きになりました。その後、マクドナルドを退社して、自分の会社を設立することになったときに、日本でフーターズをやろうと決めました。それが5年前ですね。
――はじめはなかなか交渉がうまくいかなかったとか。
アメリカ本部も、日本に出店したいという興味は以前から持っていたようです。私が交渉する前からオファーもたくさんあったそうですが、話を聞いてみると、日本からのオファーはどれもいわゆる水商売系の話ばかり。フーターズはあくまでレストランなので、そういうイメージではやりたくないとアメリカ本部は言っていました。だから私たちも最初はすごく警戒されましたね。そのような背景もあって、日本上陸にこぎ着けるまで5年もかかってしまいました。
――最終的には田辺さんがアメリカ本部から信頼を勝ち得たわけですね?
マクドナルドで働いていた経歴が大きかったと思います。そのとき知ったのは、アメリカのビジネスの基本は「Face to Face」ということ。どこの誰かという背景よりも、その人自身を信頼できるかどうか。私にはフーターズで儲けようという気はなく、「好きだからやりたい」という思いがありました。私のライフワークは、「人を幸せにする仕事」。マクドナルドも“ハッピービジネス”を掲げていました。フーターズほどの“ハッピービジネス”はほかに見当たりません。お客さまはみんなニコニコして帰っていかれます。これこそまさに「人を幸せにする仕事」だと思います。そういう思いがアメリカ本部にも伝わったのではないでしょうか。
――日本初進出を赤坂の地と決めた理由は?
フーターズは“スポーツ&カジュアルレストラン”なのだというブランドイメージを正しく伝える必要がありました。そういう意味では、赤坂はフーターズというブランドを最も正しく理解してもらえる場所だと思ったのです。六本木などでは、セクシーなイメージに寄りすぎてしまいます。それに外国の方にとっては、ここ赤坂見附の交差点は銀座4丁目の交差点と同じくらいの価値がある場所なんです。なので、赤坂の地を選んだのはベストな選択でした。
――それにしても、オープン以来連日大盛況ですね。
うれしい限りです。お客さまには現在、平均すると1時間半ほどお待ちいただいています。でも、私たちは接客を大事にしているので「2時間で帰ってください」などという時間制限は設けていません。中には、オープンから閉店までいらっしゃる方もいます。それに地方からわざわざ来てくださる方もいて、今は予約も受けられない状態です。私にとってもここまでの成功は予想外でした。おかげさまで、赤坂店は世界のフーターズグループの中で、オープン1週間の売り上げが世界一になりました。このまま順調に行けば、1カ月のワールドレコードも取れそうです。
――なぜ、日本のフーターズはそれほど支持されているのでしょう?
やはり、それはフーターズガールのおかげだと思います。日本人にはホスピタリティの面で「気配り」という強みがあります。それはお客さまが何をしてほしいと思っているのかを察知する能力に長けているということ。それに、海外で生活したことがあるフーターズガールも多いので、国際的なバランス感覚に加えて、日本人ならではの「気配り」というメンタリティも持っています。そのようなクオリティーの高いホスピタリティが、お客さまに支持していただいている理由ではないでしょうか。
――確かに、フーターズガールの皆さんは、常に気を配りながら積極的に話しかけてくれます。
彼女たちのイメージは、「近所にいるきれいなお姉さん」。だからお客さまには気軽に遊びに来ていただきたいですし、こちらも壁を作らないようにしています。こうした接客はマニュアルにはできません。なので、レベルの高い女性を採用しています。私が全員を面接しましたが、みんなどこか光るものを持っている女性ばかりです。例えば、大学教授を目指している人や医者の卵、公認会計士なんていう人もいます。現在の在籍数は60人で、全員がTOEICスコア700以上のレベルで、ネイティブも10人ほどいます。会議もトレーニングも英語。普通なら、飲食業で働かないような女性ばかりです。こんな集団は日本にはほかにありません。素人で、国際感覚があり、歌って踊れて、しかもそんな女性が普通に接客をしているわけですから…。
――どうしてそのような女性ばかりを集めることができたのでしょうか?
フーターズガールというのは、アメリカでは一つの職種として認められています。履歴書にも、飲食業ではなくフーターズガールと書けるんです。アメリカでは「オレンジ・プライド」という合言葉の下、フーターズで働く女性たちが皆、フーターズガールという職業にプライドを持っています。当店で働いていてる女性たちは、海外のフーターズに行ったことがあり、そのようなフーターズガールに憧れて「ぜひ働きたい」とやって来ています。日本でも、「フーターズガールをしていました」というのがステータスとなるようにしていきたいと思っています。
――アメリカで行われる「ミスフーターズコンテスト」には日本からも出場されるとか。
そうです。日本代表は1人ですが、お客さまの投票で決めようと考えています。フーターズ会員に入会してくれた方限定という形ですが、ウェブ上でどのフーターズガールに投票するか選べるなど、できるだけオープンにして、お客さまが参加できるようにするつもりです。出場するからには世界のミスを目指したいですね。また、日本オリジナルのイベントやメニューなども企画しています。近いところでは、クリスマスやカウントダウンなど。もちろんアメリカ本部の許可は必要ですが、彼らもここまで成功したらどんどん好きにやっていいと言ってくれているので、期待してください。
――今後、赤坂以外にも出店される予定はありますか?
品川や銀座などを候補として考えています。地方では沖縄でビーチサイドレストランなんてのもいいですね。ただ、まずは赤坂にフーターズをしっかりと定着させることが大切。今はかなり大勢の方に来店していただいていますが、これをただの流行に終わらせないようにしなければいけません。成功に甘んじず、ホスピタリティと料理という飲食店の基本をしっかりやっていく。そこをきちんと提供できれば、優秀なフーターズガールが働いてくれているので、お客さまには必ず満足してもらえるはずです。今後もお客さまの期待に応えられるよう、サービスの向上を目指し続けます。
■田辺満男さんプロフィール
エッチジェー取締役社長。
日本マクドナルドホールディングスに18年間勤め、5年前にアメリカ本部に直接コンタクトをとる。その3年後には「HOOTERS」の日本進出の受け入れ会社として同社を設立。2年前にアメリカのHooters of America社と正式に契約を結び、念願の日本1号店を2010年10月25日にオープンした。