国立国会図書館(千代田区永田町1、TEL 03-3581-2331)新館1階・展示室で11月11日、翻訳をテーマにした企画展「知識を世界に求めて-明治維新前後の翻訳事情-」が始まる。
1883(明治16)年の井上勤版ロビンソン・クルーソー「魯敏孫(ロビンソン)漂流記:絶世奇談」
1948(昭和23)年に創設した同館。日本国内で刊行される出版物を納本制度によって収集し、国民の文化的財産として長く保存してきた。日本で唯一の国会図書館としての機能を持ち、国会の立法活動を補佐する役割も担う。
同展では、江戸時代後期から明治時代前期の翻訳事情に焦点を当て、同館が所蔵する中国や西洋諸国の原書及びその翻訳書、約200点を展示する。会場には、明治時代にベストセラーとなった福沢諭吉の「西洋事情」や、オランダ語の医学書を訳した「解体新書」、国際法の知識を人々に伝えた「万国公法」、1883(明治16)年の井上勤版ロビンソン・クルーソー「魯敏孫(ロビンソン)漂流記:絶世奇談」などを展示。翻訳事情を示す資料や、翻訳した人物像の紹介も行う。
11月12日は、オンラインによる講演会を行う。当日は「翻訳学の視座から読む明治の文学翻訳者の言説-なぜ、いかにして訳すのか-」をテーマに、1時間30分にわたり開催する。講師は順天堂大学国際教養学部准教授の齊藤美野さんが務める。講演後には約30分間の質疑応答も予定する。参加無料。定員は300人。申し込み先着順で、同館サイトで受け付ける。
同館展示担当者は「江戸時代に使われていた辞書や明治時代の翻訳教科書など、実際に江戸時代・明治時代の人々が読んだ資料を多数展示する。文学のコーナーでは、江戸時代から読まれていた『水滸伝(すいこでん)』、明治時代の『イソップ物語』、シェークスピア作品なども展示する。利用者登録や来場予約は不要なので、国立国会図書館が初めてという人も気軽に来館してほしい」と話す。
開場時間は10時~19時(土曜は18時まで)。日曜・祝日、11月16日休館。入場無料。12月9日まで。