電子書籍共通配信プラットフォームを提供しているブックリスタ(港区赤坂2)のオフィスの一角で、ブックディレクターの幅允孝さん(BACH)と、ブックコーディネーターの内沼晋太郎さん(numabooks)が共同で本棚を作成した。
ブックディレクター、ブックコーディネーターとは、本にまつわるクリエーター。その仕事の一環として、店舗や企業などの本棚をオーダーやコンセプトに合わせコーディネートすることも多い。幅さんは、「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」や東急ハンズ銀座店「HANDS BOOKS」など、内沼さんは「disk union book jazzTOKYO」や「book union」など、多数のカルチャースポットの本棚を手掛けている。
2人が同社の本棚コーディネートに使った本は約500冊。ヘンリー・ペドロスキーの名著「本棚の歴史」や、澁澤龍彦蔵書目録をつづった「書物の宇宙誌」など本にまつわる書籍を中心に、「すてきな3にんぐみ」などの名作絵本、河出書房新社の世界文学全集などを陳列した。書籍だけではなく雑誌もラインアップ。廃刊した雑誌「relax」などカルチャー色の強いものから、昔の「少年サンデー」「少年マガジン」「ガロ」など、年代物の人気漫画誌までそろえた。
ブックリスタのメディアプロデューサー、野村秀樹さんは「電子書籍は紙の本と対立する存在だと思われがち。でも、デジタル化は「本」を扱うなかでの一つの手段でしかなく、実際に社内を見てみてもすごく本が好きな人たちが電子書籍に関わっている。そのことが伝わるような本棚、オフィスを作りたかったため、今回2人に本棚作成を依頼した」と話す。完成した本棚については、「文句のつけようがないほどワクワクする」とも。
「今回、本棚に並べた作品はどれも経年変化に耐えられそうな本ばかりを選んだ。10年、20年たっても読まれていそうな名作ばかり。いい意味で『節操のない』本棚にできたと思う」と幅さん。内沼さんは「本好きな人であれば誰でも、必ずどこかでうなるような本棚にしたかった。限られた本の数で、いかに本の世界の広さ、奥深さを表現するかが課題だった。できるだけ多くの本好きを刺激するようなラインアップをそろえたつもり」と話す。
現在、一般公開の予定はないが、「今後、何かのイベントなどで、この本棚のある一角を公開利用することも検討中」(野村さん)だという。