特集

ホッピービバレッジの3代目社長・石渡美奈さん
赤坂の街とともに創業100周年

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■社長の成長が社員の成長、企業の成長になる“共”育産業

――創業100周年おめでとうございます。社長に就任されて何か変化はありましたか。

ありがとうございます。7年前から、父に「いずれ3代目のバトンは美奈に渡す」と言われていました。「人も組織も美奈が社長になった時のことを考えて、これから育てていきなさい。僕は手も足も出さない」と。それに以前から、金融機関様とのお取引などいわゆる社長業務もやらせてもらっていました。その流れでバトンを受け取りました。7年間の社長準備期間を与えてくれた父にとても感謝しています。

――100年続く企業にも関わらず、若い社員の方が多いですね。

社員の平均年齢は31歳。赤坂の本社だけでいったら、もっと若いです。実質ベンチャー企業ですよね。とても100年の会社とは思えない。

 新卒を採用するようになってから、入社12カ月前になると親御さんのところに必ず挨拶に行っています。親御さんというのは、我が子が社会人になることに少なからず不安を抱えていらっしゃるんですよね。ましてや中小企業ともなると「本当に大丈夫なのか」と思う部分もあると思うんですよ。そこで、社長として最後には必ず私の思いや、社員たちとどうしていきたいかを直接お話させてもらっています。そうすると「これからはあなたが私達に変わって子どもを育ててほしい」と仰っていただけます。その時、新卒というのは20歳を超えて入社はしてくるものの、社会人としては何も知らない赤ちゃんと一緒で、だからこそ責任は重いぞと痛感しました。

――石渡社長の社会人生活はどのようなスタートでしたか。

社会人になって初めの3年間は、日清製粉でお世話になりました。そこで、一番細かな、しかし社会人としての大切な作法を厳しくも丁寧に教えて頂いたことが、今の自分のベースになっていると感じています。「3つ子の魂100まで」というように、最初の3年間はものすごく大事。社員に対しても、最初の3年間をどう育てるかによって、彼らの大人としての長い一生が決まるという責任感を感じています。これは全身全霊で育てていかないと、私を信じて入社した子たち、親御さんたちを裏切ることになってしまう。それはしてはいけないと考えています。

とはいえ、私自身、42歳といえども経営者としてはひよっこ。社会人としてもまだまだこれからという年齢です。だからこそ、私の成長と共に社員の成長があり、企業の成長があるという“共”育産業を掲げています。中途採用に比べて新卒社員を育てるのは大変で時間はかかるけれど、5年後の企業の組織力、そして私が楽になるか(笑)ということを考えれば歴然の差。色々な苦しいことを乗り越えた5年後、我が社ならではの存在価値を発揮できるような企業になっていたいと思っています。

■過程を共有することで言語・価値観を共有する

――経営者でありながら「現役大学院生」の顔もお持ちですね。

現場で培ったものをアカデミックな面からも検証し、企業経営に活かせればと早稲田大学ビジネススクールMOT(技術経営)プログラムに在籍しています。大学院に通うということを、社員の中には少なからず不安に思う人もいたと思います。「何を学ぶのだろう」、「何を考えているのだろう」、ましてや「自分たちは仕事をしているのに」と思う人もいたかもしれません。そこで、教授の許可も頂き、研究発表の際には、社員にも聞き手として参加してもらっています。決まった結論だけをある時ただ押しつけても、戸惑いや抵抗を隠せません。モチベーションも一気に下げてしまうかも知れない。だからこそ、過程を共有することで言語を共有し、価値観を共有します。これも“共”育の一つですよね。教授には「ここまで授業料を強かに生かしている会社はいない。授業料の元をとってお釣りが出ているんじゃないか」と言われています(笑)。けれど、社員教育にも繋がっている大切な場所です。会社を良くするために社長が必死になっている姿を見るだけでも意味があるのではないでしょうか。

――まさに「よく働き、よく遊び、よく学ぶ」ですね。

「よく飲み」もですね。社員との飲みニケーションでお伺いするお店はやはり赤坂の飲食店様が多いです。赤坂は懐が深くて大きい街だと思います。和と洋が混在していて、すごく最先端のものもあれば伝統的なものもある。昼と夜の顔が違うのも魅力ですよね。オフィス街だと夜はゴーストタウンになってしまう街が多いけど、赤坂はそんなことはない。「正装じゃなきゃ歩けない街」と思っている人も多いけれど、実はジャージで歩いていても許される街ですよね。

■ホッピーも「赤坂だったらいろいろな味が飲める」

――新人教育のひとつとして、赤坂の飲食店でトイレ掃除を行っているとお聞きしました

新人はプレゼン能力もまだまだ。お客さまに満足頂けるような提案をすることは難しいんです。じゃあ何ができるかといったら汗を流すこと。やっぱり新人は量。量をこなして基本を身につける。それが原理原則です。回数を重ねればお客さまにも顔を覚えてもらえる。新卒の社員達が一生懸命、汗をかきながらお伝えることで伝わることがあるんです。商いはFACE to FACE。最後は人と人で、その絆が大きい。小さな会社だから、大手企業と同じように全国カバーなんて到底できない。だからこそ地元である赤坂だけはライバルの追随を許さないという思いでお仕事をさせていただいています。

――これからも、赤坂の街と共に成長していくのですね。

地元の方々に愛される企業でありたいし、私も含めそういう社員でありたいと思っています。赤坂って料理も本当に多国籍。そんな赤坂らしさに合わせて、ホッピーも「赤坂だったらいろいろな飲み方で楽しめる」と言っていただけたらうれしいです。いつまでも、赤坂らしさを大切にして「大人がうれしい街」であってほしいですね。我々ホッピービバレッジも、小さな発信ではありますが「大人のうれしい」をご提供できる一員であり続けたいと思っています。

■石渡美奈さんプロフィール

1968年東京都生まれ

立教大学卒業後、日清製粉(現・日清製粉グループ本社)入社。

人事部に所属し、93年退社。その後、広告代理店を経て、97年、祖父が創業したホッピービバレッジ(旧・コクカ飲料)入社。広報宣伝、副社長を経て201046日、創業100周年の年に3代目社長に就任。現在、早稲田大学ビジネススクールMOTプログラム在籍中。

「ホッピーの教科書 みんなに愛される元気な会社の作り方」「社長が変われば、社員は変わる!」など著書多数。

ホッピービバレッジ株式会社 http://www.hoppy-happy.com/

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