国立国会図書館(千代田区永田町1、TEL 03-3581-2331)ウェブサイト内のミニ電子展示「本の万華鏡」で現在、「推し活狂想曲」が公開されている。
同展示サイトは、2009(平成21)年5月に始まった企画。さまざまなテーマに沿い、同館が所蔵する「資料の世界へと誘う気軽な読み物」を公開している。毎回テーマを決め時間をかけて作り上げるため、年に1~2回のペースで新しい展示を発表している。
今回の展示では、自分の好きなアイドル・俳優・アニメキャラなどを応援する活動、通称「推し活」が、近年の新しい社会現象でなく昔からあったことに注目。江戸時代や明治時代に、人々が夢中になっていた茶屋娘、歌舞伎役者、女義太夫(ぎだゆう)に焦点を当て、当時の「推し活」の様子を3幕仕立てで紹介する。
第1幕は「会える推し 茶屋娘」をテーマに、茶屋娘たちを推した江戸の人々を、主に錦絵を通して紹介する。茶屋娘の中で最初に人気者となった「笠森お仙」、江戸時代に人気を誇った茶屋娘の「難波屋おきた」と「高島(屋)おひさ」などについて紹介。このほか、有名な茶屋娘は後世まで繰り返し、さまざまな著作の題材になっていることについても紹介する。
第2幕は「華やかな推し 歌舞伎役者」をテーマに、歌舞伎の錦絵を切り口に、江戸の人々の歌舞伎への熱い思いを取り上げる。同幕では、さまざまな種類の錦絵を紹介。役者たちの日常を取り上げた錦絵や演目が始まる前の楽屋の様子、同じ役者たちと行楽に出かけた様子を描いた錦絵などを掲載する。このほか、現代の「推し活」と通じるものがある資料として、「団扇(うちわ)絵」といわれる錦絵、役者の「家ごと・個人ごと」の「紋(もん)・模様」を身に着けることがファッションの一つとなっていたことが分かる錦絵なども掲載する。
第3幕は「魅了する推し 女義太夫」をテーマに、女義太夫に夢中になった熱狂的なファンの「推し活」に焦点を当てる。「どうする連」と呼ばれていた熱狂的なファン集団、寄席から寄席へ移動する推しの女義太夫の人力車を追いかけていたことから「追駆連(おっかけれん)」とも呼ばれていたファン、文豪の「推し活」といった内容なども紹介。志賀直哉がファンだった豊竹昇之助の義太夫を聴くことのできる「歴史的音源」へのリンクも付ける。
同館担当者は「現代の『推し活』と比較してみることで、当時の人々にも私たちと変わらない熱意があったことを感じてほしい。各幕が独立しているので、興味や関心のある幕から読むことができる。身近なテーマを通して、普段は図書館や本になじみのない人にも楽しんでほしい」と話す。